転職活動を始めたいと考えた時、働きながらは大変なので退職して活動したい、と思う人も多いと思います。他人に相談しても多くは「働きながら」活動すべき、という答えが返ってくるでしょう。
しかし、全ての人が働きながら転職活動をすべき、と筆者は考えていません。個人の状況をよく考えて判断してよいと考えています。ただし環境や条件を見極めなければ、本人があとから苦しくなることもあり得ます。
この記事では、転職活動を働きながら行うか、退職して行うのかを考える際に、元採用担当で人事経験が長い筆者の視点をお伝えします。ひとつの参考にしてもらえれば嬉しいです。
一般的に言われる働きながら転職活動をした方が良い理由
1.金銭的問題
退職して収入がないまま転職活動を行い、次の仕事が決まらないまま数か月経つと、金銭面で相当な不安になります。必要なお金は家賃や光熱費、食事代だけではありません。国民健康保険や国民年金などの社会保険料、住民税の納付もあります。
金銭的な不安を抱えて転職活動をすると、最初に考えていたよりも低い条件の転職先を選んでしまう可能性が高まってしまいます。
絶対に避けなければならないのは、転職前の方が条件が良かったのにより悪い環境に飛び込んでしまうことです。
2.ブランクができてしまう問題
退職して転職活動し、運よくすぐに次の仕事が決定すれば問題ないですが、うまくいかない場合もあります。3ヶ月程度であれば問題にされませんが、半年近くになると企業からはブランクとみなされてしまうことが多いです。
書類選考や面接で、企業の担当者がなぜ退職して転職活動しているか、理解できる状況(特に労働時間が多すぎて転職活動ができなかった、退職して転職活動するために準備していた、家庭の事情)であればよいのですが、後先を考えずに退職してしまった、と思われてしまう可能性があります。
こういったことは一切気にしない、本人の経験値と人柄以外は関係ない、と考えてくれる企業ももちろんありますが、気にする企業もそれなりにあるということは無視しない方が良いと思います。
3.精神的に辛い場合、ある程度回復するまで会社に在籍したほうが良い
長時間労働や職場環境の問題で精神的に辛くなり、どうしても退職してしまいたい、それから転職活動をしたい、という人もいると思います。気持ちはよくわかります。
ただ、精神的に辛いまま無職になってしまうと、辛さが緩和しても新たに金銭的な不安に直面することになったり、辛い精神状態のまま転職活動を行う行動力を自分から絞り出すのは、なかなか大変です。
また、採用や人事の担当者の中には、辛い精神状態でいることを応募書類や面接で敏感に見極める人がある程度いるので、候補者の良さがうまく伝わらず、印象が悪くなり不利になることはよくあります。
厳しい環境の中難しいかもしれませんが、有給休暇を取得したり、異動を願い出たり、必要であれば診療を受けたりなどできることをして、ある程度回復することを目指しましょう。
精神的に元気になってから転職活動を行った方が必ずと言っていいほどうまくいきます。
働きながら転職活動ができない環境とはどのような状態か
1.勤務時間が長すぎる
ほぼ毎日勤務時間が深夜(22:00)以降までおよんでしまう場合、体力的にも精神的にも今の仕事だけで精一杯で、それに加えて転職活動を行うことはまず厳しいでしょう。面接などでも、勤務時間を具体的な数字で伝えることができれば、企業から理解してもらえる可能性は高いです。
2.勤務時間が長く、休日は土日祝日のみで有給休暇の取得ができない
ほぼ毎日勤務時間が20:00以降までおよんでしまい、さらに休日が土日祝日のみで、有給休暇の取得ができない環境の場合、面接(リアルだろうとwebだろうと)の日程調整がまず難しいので、転職活動を行うことは厳しいでしょう。この時間以降に普通に面接を設定する企業は、入社した後、その感覚で勤務時間が長くなることが想像されるので、長時間労働を望まない人にはあまりお勧めできません。
この条件をクリアしていれば退職して転職活動する判断も大丈夫
1.1年分の生活費の蓄えがある
冷静な判断をするためには金銭面の不安がないことがなによりも重要です。どうしても退職して転職活動したいと考えている人は、まずそのための資金を貯めておきたいです。
なお、仕事を退職した後は、面倒でも国民年金と国民健康保険の手続きは行っておきましょう。国民年金は免除または納付猶予が認められることがあります。国民健康保険は加入しないと医療が受けづらくなり、何かあった時に取り返しがつかなくなると困ります。よりつらい状況にならないように手続きをしておきましょう。
退職後、手続をすれば失業保険ももらえますが、手続から給付まで少しブランクもあります。少なくとも半年働かなくても生活できるだけの余裕が必要です。できれば1年分の蓄えがあればよいでしょう。
2.住む場所の心配がない
1と関係しますが、金銭的に厳しくなり、家賃が払えなくなってしまうことがとにかく最悪です。実家に住んでいる人や自分に収入がなくても住む場所に心配がない場合は、退職して転職活動を行ってもそれほど不安がありません。
その代わり、同居する家族やパートナーには、迷惑をかけることになるかもしれないので、あらかじめ説明して理解、もしくは了承を得ておきましょう。なるべく同居する人には自分の味方になってもらうことが大切です。